物流改善の具体的な進め方とは?コスト削減と効率化を実現する7つの方法を解説

物流改善の具体的な進め方とは?コスト削減と効率化を実現する7つの方法を解説

企業の利益を最大化し、競争力を高めるためには、物流プロセスの効率化が不可欠です。しかし、「どこから手をつければ良いかわからない」「具体的な改善方法が思いつかない」といった悩みを抱える担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、物流改善の目的から具体的なアイデア、成功に導くための進め方までを網羅的に解説します。

物流改善とは?目指すべき3つのゴール

物流改善とは、物流における様々な工程の無駄をなくし、業務プロセスを効率化することで、企業の利益向上と顧客満足度の向上を目指す取り組みです。具体的には、「コスト削減」「生産性と品質の向上」「顧客満足度の向上」という3つのゴールを達成することが重要です。

コスト削減の実現

物流コストは、人件費、保管費、輸送費など多岐にわたり、売上高の大きな割合を占めることがあります。そのため、各工程の無駄を徹底的に排除することが直接的な利益向上につながります。例えば、倉庫内の作業動線を見直して移動距離を短くしたり、在庫管理を適正化して保管スペースの無駄をなくしたりすることで、人件費や保管費を削減できます。

コストの種類削減アプローチの例
人件費作業の標準化、自動化による省人化
保管費在庫管理の適正化、ロケーション管理の最適化
輸送費共同配送の活用、配送ルートの最適化

生産性と品質の向上

物流現場では、ピッキングミスや梱包ミス、配送遅延といったヒューマンエラーが品質低下の大きな原因となります。作業手順を標準化したり、誰でも同じ品質で作業ができるようにマニュアルを整備したりすることで、業務の属人化を防ぎ、生産性と品質の両方を向上させることができます。また、ITシステムを導入して作業を自動化・簡略化することも有効な手段です。

顧客満足度の向上

迅速で正確な配送は、顧客満足度を大きく左右する重要な要素です。物流改善によって、注文から商品が届くまでのリードタイムを短縮し、誤出荷や配送遅延を防ぐことで、顧客からの信頼を獲得できます。高品質な物流サービスは、リピート購入や企業のブランドイメージ向上にもつながるため、競争の激しい市場において強力な差別化要因となります。

物流改善を進める上での重要な4つの視点

物流改善を効果的に進めるためには、多角的な視点から課題を分析し、対策を講じる必要があります。ここでは、特に重要となる「ハード」「ソフト」「人材管理」「オペレーション」の4つの視点について解説します。

ハード:物流設備や拠点

ハードとは、倉庫の立地やレイアウト、マテハン機器(マテリアルハンドリング機器)、配送車両といった物理的な設備を指します。例えば、「倉庫の保管効率が悪い」「ピッキング作業の動線が長い」といった課題は、レイアウト変更や自動倉庫などのマテハン機器導入によって改善できる可能性があります。まずは自社の物理的なインフラに改善の余地がないかを確認することが重要です。

ソフト:情報システムや管理体制

ソフトとは、WMS(倉庫管理システム)やTMS(輸配送管理システム)といった情報システムや、業務マニュアル、管理体制などを指します。システムの導入によって作業の精度を向上させたり、管理体制を見直して指示系統を明確にしたりすることで、業務の効率化と標準化を図ることができます。アナログな管理方法に起因するミスや非効率が発生していないかを見直しましょう。

人材管理:適切な人員配置と教育

物流現場を支えるのは「人」であり、人材の管理は改善の根幹をなします。スタッフのスキルや習熟度に合わせた適切な人員配置、定期的な研修によるスキルアップなどが、生産性の向上に直結します。従業員のモチベーションを高めるための評価制度や、働きやすい環境を整備することも、長期的な視点での人材定着と品質向上につながります。

オペレーション:業務プロセスの見直し

オペレーションとは、入荷、検品、ピッキング、梱包、出荷といった一連の業務プロセス(作業手順)を指します。一つひとつの作業に「ムリ・ムダ・ムラ」がないかを見直し、ボトルネックとなっている工程を特定することが改善の第一歩です。例えば、作業手順を標準化したり、シンプルな動きで作業できるように改善したりすることで、作業時間の短縮とミスの削減が期待できます。

物流改善の具体的なアイデア7選

ここでは、明日からでも検討できる物流改善の具体的なアイデアを7つ紹介します。自社の課題に合わせて、最適な手法を検討してみてください。

倉庫レイアウトの最適化

倉庫内のレイアウトは、作業効率を大きく左右します。出荷頻度の高い商品をピッキングしやすい手前に配置する、関連商品を近くに保管するなど、商品の特性や動きを分析して最適な配置(ロケーション管理)を行うことが重要です。動線を短くすることで、ピッキング作業にかかる時間を大幅に削減できます。

5S活動の徹底

5Sとは、「整理・整頓・清掃・清潔・しつけ」の頭文字を取ったもので、職場環境を維持・改善するためのスローガンです。不要な物を処分し(整理)、必要な物を使いやすい場所に置く(整頓)といった基本的な活動を徹底するだけで、作業スペースが確保され、物を探す無駄な時間が削減されます。安全性の向上にもつながる、基本的かつ効果の高い取り組みです。

在庫管理の適正化

過剰在庫は保管コストを増大させ、欠品は販売機会の損失につながります。需要予測の精度を高め、適切な発注点管理を行うことで、常に適正な在庫量を維持することが重要です。ハンディターミナルや在庫管理システムを活用して、リアルタイムで正確な在庫状況を把握できる仕組みを構築することが、適正化の第一歩となります。

配送ルートの見直し

燃料費の高騰が続く中、配送コストの削減は急務です。複数の配送先を効率的に回るための最適ルートを組んだり、時間指定の条件を緩和したり、複数の荷主でトラックをシェアする共同配送を利用したりすることで、輸送効率を高め、コストを削減できます。

WMS(倉庫管理システム)の導入

WMS(Warehouse Management System)は、倉庫内の業務を一元管理するシステムです。リアルタイムでの在庫管理、ロケーション管理、先入れ先出しの徹底、作業進捗の可視化などが可能になります。ハンディターミナルと連携させることで、バーコード検品による誤出荷の防止やペーパーレス化も実現でき、業務の正確性と効率を飛躍的に向上させます。

WMSの主な機能導入による改善効果
在庫管理機能在庫の可視化、欠品・過剰在庫の防止
入出庫管理機能作業進捗の把握、誤出荷・誤入荷の防止
棚卸管理機能棚卸作業の時間短縮と精度向上

マテハン機器の活用

マテハン機器とは、フォークリフトやコンベア、自動倉庫、ピッキングロボットなど、物流業務を効率化するための機器の総称です。重量物の運搬や単純作業を自動化することで、作業者の負担を軽減し、生産性を向上させます。初期投資はかかりますが、長期的な視点で見れば、人手不足の解消や人件費の抑制に大きく貢献します。

物流アウトソーシング(3PL)の検討

自社での物流改善に限界を感じている場合、物流業務全体を専門企業に委託するアウトソーシング(3PL:Third Party Logistics)も有効な選択肢です。物流のプロに任せることで、自社のリソースをコア業務に集中させることができます。専門業者ならではのノウハウやネットワークを活用することで、自社単独では実現が難しいレベルのコスト削減や品質向上が期待できます。

物流改善を成功させるための進め方

物流改善は、やみくもに進めても成果は出ません。成功させるためには、正しい手順で計画的に取り組むことが重要です。

ステップ1:現状の課題を可視化する

まずは、自社の物流プロセス全体を詳細に把握し、どこに問題があるのかを洗い出します。各工程の作業時間、コスト、ミス発生率などのデータを収集・分析し、「何が」「どこで」「なぜ」問題になっているのかを具体的に可視化することが重要です。現場の作業員へのヒアリングも、データだけでは見えない課題を発見するために有効です。

ステップ2:具体的な目標(KPI)を設定する

課題が明確になったら、次に「何を」「いつまでに」「どのレベルまで」改善するのか、具体的な目標(KPI:重要業績評価指標)を設定します。「コストを10%削減する」「誤出荷率を0.01%以下にする」など、数値で測定できる目標を設定することで、改善活動の進捗状況を客観的に評価できるようになります。

ステップ3:改善策の計画と実行

設定したKPIを達成するために、最も効果的と思われる改善策を選択し、具体的な実行計画を立てます。誰が、いつ、何を行うのかを明確にし、関係者全員で計画を共有した上で実行に移します。スモールスタートで効果を検証しながら、段階的に適用範囲を広げていくのが成功のポイントです。

ステップ4:効果測定と見直し

改善策を実行した後は、必ず効果測定を行います。設定したKPIが達成できたか、新たな問題が発生していないかなどを定期的に評価し、計画通りに進んでいない場合はその原因を分析して、さらなる改善策を検討します。この「計画(Plan)→実行(Do)→評価(Check)→改善(Action)」のPDCAサイクルを回し続けることが、継続的な物流改善につながります。

物流改善の成功事例

ここでは、AI活用による配送最適化や倉庫レイアウトの見直しによって、実際に成果を上げた企業の具体的な事例を2つ紹介します。

【事例1】配送小口をまとめる手法で運輸コストを最適化したケース

アスクルでは、東京大学大学院田中研究室との共同研究により、膨大な注文データを活用した物流モデルの最適化に取り組んでいます。AIとビッグデータを活用した配送ルート最適化により、配送個口割れの減少を実現しました。また、一度の注文で複数小口に分かれてしまうケースを分析し、配送小口をまとめる手法を確立することで配送効率を向上させています。この取り組みにより、ドライバーの労働時間抑制と輸送コストの最適化を同時に達成しています。

参考:アスクル統合レポート2024

【事例2】倉庫レイアウト変更でピッキング時間を短縮したケース

アクト中食株式会社では、ベテラン作業員の経験に頼ったピッキング作業が属人化し、新人作業員の生産性が上がらないことが課題でした。ABC分析(在庫を売上高や利益、販売数量などの観点から重要度に応じてA・B・Cの3つのグループにランク分けする手法)を用いて商品の配置を見直し、出荷頻度の高い商品をまとめて配置するレイアウトに変更。結果として、ピッキングの総移動距離が短縮され、作業効率の改善が見られました。

参考:仕入れ先さまの発展を実現させる老舗食品卸の現場改善

まとめ

物流改善は、コスト削減や生産性向上だけでなく、顧客満足度を高め、企業の競争力を強化するための重要な経営課題です。本記事で紹介した4つの視点と7つのアイデアを参考に、まずは自社の課題を可視化することから始めてみてください。PDCAサイクルを回しながら継続的に取り組むことで、必ず大きな成果へとつながるでしょう。

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千里運輸マーケティング戦略推進室

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