物流・倉庫現場の人手不足を背景に、外国人材の採用を検討する企業が増えています。しかし、実際に受け入れるとなると、「倉庫作業ではどの在留資格が使えるのか」「安全教育やマニュアルはどう整備すればよいのか」「採用しても定着しなかったらどう改善すればいいのか」といった実務上の疑問が出てきます。
外国人材の活用では、採用手続きだけを整えればよいわけではありません。現場で指示が伝わる仕組み、安全に働ける環境、日本人スタッフとのコミュニケーション、採用後のフォローまで含めて設計する必要があります。
この記事では、物流・倉庫現場で外国人材を受け入れる際に必要な準備と定着化のポイントを、現場実務の視点から整理します。あわせて、自社での採用・管理負担が大きい場合の選択肢として、業務請負会社への委託についても解説します。
目次
倉庫作業で外国人材を受け入れるには何が必要か

外国人材を倉庫作業に配置する場合、最初に確認しなければならない事項が「在留資格」と「従事できる業務の範囲」です。在留資格によって認められる活動が異なるため、「外国人であれば誰でもピッキングや仕分けを担当できる」というわけではありません。
使える在留資格と対応できる業務範囲
物流倉庫分野は、2026年1月の閣議決定で特定技能および育成就労の対象分野に追加されました。育成就労制度は2027年4月1日から運用開始予定です。一方、物流倉庫分野の特定技能1号については、2026年9月時点で技能評価試験の開始時期が調整中であり、実際の採用を検討する際は最新情報の確認が必要です。
物流・倉庫現場で検討対象となる主な在留資格は次のとおりです。
| 在留資格等 | 倉庫作業との関係 | 日本語・期間等のポイント |
| 特定技能1号(物流倉庫) | 物流倉庫分野の対象業務に従事可能。受入れ開始に必要な技能評価試験は2026年10月時点で開始時期調整中。 | 日本語A2相当以上(JLPT N4等)と技能試験合格が要件。特定技能1号は通算5年が基本。 |
| 育成就労(物流倉庫) | 2027年4月から制度開始予定。3年間の就労を通じて特定技能1号水準の人材育成を目指す制度。 | 就労開始前は日本語A1相当以上(JLPT N5等)または相当する講習などが必要。 |
| 技能実習 | 制度移行期は対象職種・作業と計画に沿って従事。育成就労制度への移行が予定されている。 | 技能実習制度の要件に従う。新制度への移行時期・経過措置の確認が必要。 |
| 永住者・定住者等の身分系資格 | 就労制限がない資格であれば、ピッキング・仕分け・梱包など幅広い業務に従事可能。 | 在留資格ごとの在留期間や更新条件を確認。 |
| 技術・人文知識・国際業務 | 専門的・技術的業務が対象。単純な倉庫内作業を主業務として配置することはできない。 | 担当させる職務内容と在留資格との適合確認が必要。 |
在留資格は制度改正や運用開始時期によって状況が変わります。採用時には、出入国在留管理庁や所管省庁の最新情報を確認し、実際に担当させる業務と在留資格が適合しているかを確認することが重要です。
受け入れ前に整備すべき作業標準書と安全教育
在留資格の確認と同時に進めたいのが、現場の「伝え方」の整備です。外国人材が経験者であっても、日本語だけの口頭指示や、現場独自の略語・暗黙のルールに依存した運用では、作業ミスや事故につながる可能性があります。
作業標準書は、日本語だけでなく、必要に応じて母国語、英語、やさしい日本語、写真やイラストなどを組み合わせ、作業者が理解できる形にします。特にピッキング位置、検品方法、梱包手順、フォークリフトとの動線、立入禁止区域などは、文章だけではなく視覚的に伝える工夫が有効です。
安全衛生教育についても、厚生労働省は外国人労働者が内容を確実に理解できる方法で実施するよう示しています。母国語や視聴覚教材を活用し、機械や原材料の危険性、取扱方法などが確実に伝わるようにすることが重要です。
受け入れ前には、少なくとも次の項目を確認しておきましょう。
- 多言語・やさしい日本語による作業マニュアル
- 理解できる言語・図解を使った安全教育資料
- 事故や体調不良などに備えた緊急連絡体制
- 労働条件や職場ルールを理解できる就業規則・説明資料
これらの整備は外国人材だけのためではありません。作業手順を言語化・可視化することで、新入社員や応援スタッフへの教育もしやすくなり、現場全体の標準化や品質の安定にもつながります。
外国人材が定着しない現場の共通点とは

外国人材を採用できても、短期間で離職してしまえば、人手不足の解消にはつながりません。定着を考える際は、本人側の問題だけではなく、受け入れる現場側の準備を確認する必要があります。
日本人スタッフとの摩擦と現場マネージャーの準備不足
現場で起こりやすいのが、「説明したのに伝わっていない」「何度言っても同じミスをする」「本人が何を言いたいのか分からない」といったコミュニケーション上の摩擦です。
しかし、原因を日本語能力だけに求めると改善しません。日本人同士では通じる曖昧な指示や、「これくらい分かるだろう」という暗黙知が、外国人材には伝わっていない場合があるためです。
たとえば「適当にまとめておいて」「いつもの場所へ置いて」「終わったら声をかけて」といった指示は、前提知識を共有していなければ解釈が分かれます。作業内容、数量、場所、完了条件を具体的に示すなど、指示の出し方そのものを見直す必要があります。
そのため、受け入れ前には現場マネージャーに対して、分かりやすい指示の出し方、フィードバック方法、文化や習慣の違いに関する基礎知識などを共有しておくことが重要です。
同時に、既存の日本人スタッフへの周知も欠かせません。なぜ外国人材を受け入れるのか、どのような役割を担ってもらうのか、困った場合は誰がフォローするのかを事前に共有することで、現場の戸惑いや不必要な摩擦を減らせます。
キャリアパスが見えないことによる早期離職
外国人材に限らず、「この会社で働き続けると何ができるようになるのか」が見えない職場では、長期的な定着は難しくなります。
倉庫作業の場合も、毎日同じ作業を繰り返すだけではなく、習熟度に応じて担当業務を広げる仕組みを示すことが有効です。たとえば、ピッキング・仕分け担当からチームリーダー、フォークリフトオペレーターなどへ職域を広げるキャリアの提示が考えられます。資格・在留資格・免許等の要件がある業務への登用は、個別に適法性を確認する必要があります。
また、仕事だけでなく生活面での不安も定着に影響します。定期面談、相談窓口、日本語学習の機会などを用意し、「困ったときに相談できる」状態をつくることが重要です。
つまり、採用後のフォローまで含めて運用できるかが外国人材活用のポイントです。採用人数が増えるほど、現場管理者や人事担当者の負担も大きくなるため、統括側の考慮も不可欠でしょう。
外国人材の採用・管理を業務請負会社に委託するとどう変わるか

外国人材を直接雇用する方法だけが、人手不足への対応策ではありません。自社で採用・教育・配置・労務管理まで担うことが難しい場合には、倉庫内業務そのものを業務請負会社へ委託する方法もあります。
直接雇用に伴う手続き・支援の管理負担を抑えられる
特定技能1号の外国人を自社で直接雇用する場合、受入れ機関は1号特定技能外国人支援計画を作成し、事前ガイダンス、生活オリエンテーション、公的手続きへの同行、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、定期面談などの義務的支援を実施する必要があります。
これらは一度行えば終わる採用事務ではなく、継続的な運用が必要です。外国人材の採用人数が増えれば、比例して人事担当者や現場管理者の工数も増加します。なお、特定技能1号の支援については登録支援機関へ委託する仕組みもあります。
一方、倉庫業務を業務請負会社へ委託し、請負会社が自ら雇用するスタッフによって業務を遂行する形であれば、発注企業がそのスタッフを直接雇用するわけではありません。そのため、発注企業は自社の直接雇用者として在留資格更新や雇用管理を行う立場ではなくなるため、自社の負担を軽減することができます。
ただし、業務請負では発注企業が請負会社の労働者へ直接指揮命令を行わないなど、適正な請負運用が必要です。「外国人材の管理だけを外へ出す」のではなく、業務単位で委託する仕組みとして設計することが重要です。
採用・定着・増員対応までまとめて任せられる
業務請負では、必要な人員の採用、選考、配置、教育、勤怠・労務管理などを請負会社側で行い、契約した業務を遂行します。自社で一人ずつ採用する場合と比べ、採用活動や人員管理にかかる社内工数を抑えやすくなります。
特に物流・倉庫現場では、繁忙期と閑散期で必要人数が変わるケースがあります。そのような場合でも、人材部門を持つ請負会社であれば、物量変動に応じた人員の変更を相談できる点もメリットです。
一方、業務請負には委託費が発生するため、必ずしも直接雇用より総額が安くなるとは限りません。比較するときは、採用費だけではなく、教育、管理、離職時の再採用、現場責任者の工数なども含めて判断する必要があります。
「外国人材を活用したいが、受け入れ体制をゼロから構築する負担が大きい」「まずは特定の工程から外部へ任せたい」という企業にとって、業務請負は検討できる選択肢の一つです。
外国人材・倉庫作業請負は千里運輸グループへご相談ください
直接雇用に必要な採用・教育・定着支援まで自社で担うことに負担を感じる場合は、物流業務そのものを外部へ委託する方法があります。
千里運輸グループ(アンティ)では、現在外国人ドライバーを含む大勢の方が活躍中でノウハウを熟知しております。外国人材を含むドライバー・倉庫内作業スタッフの採用・配置・管理を含めた業務請負に対応しています。人材部門との連携による人員確保に加え、繁忙期の増員についても相談できます。
また、現場管理者を配置した運営体制、ISO9001認証に基づく品質管理を行い、大阪・愛知の2拠点を中心に関西・東海エリアの物流現場に対応しています。流通加工・倉庫内作業について35年以上の請負実績があります。
外国人材を直接雇用するか、業務請負を活用するかは、自社の採用体制、現場管理力、物量変動、任せたい業務範囲によって判断が変わります。まずは現在の現場の課題と必要人数、委託したい工程を整理するところからご相談ください。
まとめ
物流・倉庫現場で外国人材に長く活躍してもらうためには、在留資格の確認だけでなく、作業標準書や安全教育の整備、日本人スタッフへの事前周知、分かりやすい指示、採用後のフォロー、キャリアの見える化まで含めた受け入れ体制が重要です。
一方、こうした仕組みを自社だけで構築・運用するには相応の工数がかかります。直接雇用の負担が大きい場合は、倉庫業務を業務請負会社へ委託する方法も比較対象にするとよいでしょう。
千里運輸グループ(アンティ)では、倉庫内作業や流通加工、人員配置・現場管理を含めた業務請負に対応しています。外国人材の活用や物流現場の人手不足でお困りの場合は、お気軽にお問い合わせください。
